1. 入社1年目の私を打ちのめした、あの日の出来事
私がまだ入社1年目で、やっと一人立ちできた頃の話です。
いつもは一人でしっかり食事を召し上がっている利用者のAさんが、その日に限って全然スプーンが進んでいませんでした。心配になって近づき、「どうしたんですか? 具合悪いですか?」と声をかけ、様子を見ていたときのことです。
背後から、お局様が冷たい声で言い放ちました。
「そんな時間ないんやし、もう片付けて!」
私が「でも、まだほとんど召し上がっていなくて……」と渋っていると、お局様は不機嫌そうに舌打ちでもしそうな勢いで、黙ってお盆を無理やり持っていってしまいました。
そのときの、Aさんの悲しそうな顔が今でも忘れられません。
後からこっそりAさんのもとへ行き、「さっきはごめんね」と声をかけると、Aさんは申し訳なさそうにこう言いました。
「ごめんね、私のせいで、あなたが怒られて……」
自分のせいで利用者さんに気を使わせてしまったこと、そして「助けてほしい」というサインを見過ごさなければならなかった自分の無力さに、悔し涙が止まりませんでした。
2. 一人の利用者にかまいすぎると怒られる職場
あの日の出来事から年月が経ち、私も介護福祉士になりましたが、あのときのような「お局様が支配する空気」は、今でも多くの現場に残っています。
彼女たちの絶対的なルールは、いつだって「とにかく効率よく、作業を早く終わらせること」です。
- 「そんなに一人に時間をかけていたら、他の業務が回らないでしょ!」
- 「早く次の誘導をして!」
- 「そんなにかまいすぎると、甘えさせるだけだからダメ!」
もちろん限られた人員でシフトを回すための効率化は理解できますが、そこで優先されているのは利用者さんのためではなく、自分たちの作業効率(=介護者ファースト)でしかないんですよね。
3. 介護者ファーストが生む、息苦しい空気
お局様の一番怖いところは、その効率重視の空気が職場全体を「支配」してしまうことです。
他のスタッフも顔色をうかがうあまり、本当に必要なケアができなくなっていきます。
🚨 効率優先の現場で失われていくもの
- 丁寧な対話の喪失: 「話を聞いてあげたい」「背中をさすってあげたい」という優しい気持ちが時間の無駄として切り捨てられる。
- 「こなす仕事」への変貌: 利用者さんが「ケアの対象」ではなく「終わらせるべき作業」になってしまう。
- スタッフの精神的疲弊: 理不尽な人間関係に耐えるうち、介護職としてのやりがいがすり減っていく。
この息苦しさは、実際に現場で働く人でなければ分からない大きな辛さです。
4. 介護福祉士として、私が絶対に譲りたくない信念
私たちが取得した「介護福祉士」という資格は、ただの作業員になるためのものではありません。
その人の尊厳を守り、その人らしい暮らしを支えること。そのためには、ときに非効率に見える時間や、心に寄り添う温もりこそが何よりも大切だと信じています。
お局様の目を盗むようにして利用者さんの手を握る瞬間、あの日の悔しさを思い出しながら、「ああ、私はこのために介護福祉士になったんだな」と、ふと初心に帰るのです。
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